2022年 はじめての大邱その⑥ 大邱文学館

大邱紀行⑥ 大邱文学館

 

先日、大邱紀行⑤で紹介した香村文化館と同じ建物、3~4階にあるのが大邱文学館です。

なぜ文学なのか?

 

大邱市のHPには、このような記載があります。

「1950年に朝鮮戦争が勃発すると、大邱には数多くの避難者が集まってきました。この時期に、民族の哀歓を描く創作活動が活発に行われ、現代における大邱の文化芸術の礎が築かれました」

 

避難してきた人のなかには、文化人や芸術家も多く、まさに、この建物がある香村エリアが、彼らの集う街だったそうです。

 

館内には、その人たちが残した功績や足跡が数多く展示されていて、大邱とゆかりのある小説家、画家、詩人たちがこんなにもたくさんいたのか、と驚かされます。

戦後の混沌とした時期にも、知人を頼って大邱を訪れたり、移り住んだ芸術家、文化人も多かったとか。

 

そのひとり、韓国人ならだれもが知る画家イ・ジュンソプの絵も展示されています。

妻子を日本に置いたまま、若くして亡くなった悲運の画家としても知られる彼ですが、その後、調べてみると、日本人妻である山本方子さんは、今年8月、102歳の長寿を全し、お亡くなりになったそうです。

「ふたつの祖国、ひとつの愛-イ・ジュンソプの妻」というドキュメンタリー作品もあり、日本と韓国で生き別れて暮らしながらも、互いに深く想い合っていたことが、インタビューなどから感じ取ることができました。(涙)

 

大邱が舞台といえばこの小説、ドラマ化もされた「深い中庭のある家」の作家、金源一も大邱育ちで、市内中心部にはこの小説を体感できる資料館をはじめ、小道には登場人物のイラストなどが描かれていました。

 

同じ建物にある香村文化館、この大邱文化館、中心部にある金源一の資料館、小道に描かれた絵画やオブジェにイラスト、著名人とのゆかりを示す標識…

そして、文学館でお会いした解説士さんの熱心な説明からは、大邱の人たちが、自分たちの住むこの地に残された文化の香りを、いかに深く愛しているのかを伺い知ることができます。

 

またそれが、大邱人としてのアイデンティティの一端となり、だからこそ、この地を大事に思い、大邱を訪れる観光客にも丁寧に接してくれるのでは…。

 

ふと、そんな思いに駆られるのでした。

 

若者たちが闊歩する繁華街、静かな小道と風情ある韓屋、赤いレンガ。

新旧の建物が混在し、独特の美しい景観を見せてくれる大邱の街。

 

地方都市という意味では、名古屋や福岡に例えられることもありますが、私個人としては、自身の第二の故郷でもある京都に共通する趣を感じます。

 

大邱に滞在できたのは、たったの2日間でしたが、この町が無性に恋しくなり、深い愛着と郷愁を覚えるのは、そのせいなのかもしれません。